循環器とは

循環器内科は、循環器に関わる疾病の診療を行う科目です。循環器とは、血液やリンパ液などの体液循環に関わる、心臓や血管等のことです。
血液が体内を循環するルートは「体循環」と「肺循環」の2つがあります。
血液は、「体循環」と「肺循環」を交互に繰り返しながら、常に体内を循環しています。

「体循環」では、心臓の左心室から送り出された血液が、動脈に送り出され、全身を一周し、静脈を通じ右心房に帰ってきます。これは必要な部位に酸素を届け、二酸化炭素を受け取ってくるものです。
「肺循環」では血液が右心房、右心室を経由して肺に入り、左心房に戻ってきます。これは体循環で心臓に戻ってきた血液を、肺において二酸化炭素などを除去し、再度酸素を多く含んだ血液に再生して、再び体循環のルートに送り出すものです。

循環器、特に心臓の病気というと、狭心症や心筋梗塞、不整脈や心不全などがイメージされると思います。
また血管の病気では、肺塞栓症や静脈血栓症などというものがあります。これらは、早期治療しなければ、命に関わる場合もある病気です。
一方、こうした病気には原因となる生活習慣や予兆となる症状、検査の値に現れる異常などに注意を払うことによって予防することも可能です。

当クリニックの循環器内科では、日本循環器学会循環器専門医である院長が、循環器に関わる問題が重篤な病気に進行しないよう、不安のある患者さん一人一人に対し丁寧な診療を行っていきます。
また一度、狭心症や心筋梗塞、心不全などを発症してしまった患者さんには、症状をコントロールし、なるべく生活の質を落とさずに、日々を送っていただけるよう、遠くの病院に行かずとも、地域で専門性の高い医療を受けられる環境を用意しています。

下記のような症状があり、少しでも不安を感じたら、あるいは循環器の病気を身近で治療したいとお考えの方は、一度ご相談ください。

  • 胸の痛みを強く感じたり、冷や汗が出たりする
  • 胸に締めつけられるような違和感を覚えるときがある
  • 時折、胸やけがする
  • あるいていたり運動したりしているときに胸が苦しくなり、休めば楽になる
  • 鼓動が速くなる、強い鼓動を感じるといった動悸がある
  • 脈が乱れたり、飛んだりする
  • 時折、特に横になっているときなどに息苦しくなる
  • 以前よりも運動時の息切れがひどくなった気がする
  • 失神した(意識を失った)ことがある
  • 健康診断の心電図や胸部X線検査で異常を指摘された
  • 血圧が高めである など
  • このほか心筋梗塞では関連痛と言って、広範囲で痛みが生じるため、腕や肩、歯、あごが痛いと感じる方もいらっしゃいます。

循環器内科で診療を行う主な疾病

  • この他、動脈硬化などの原因となる生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症等)についても診療を行っています。

狭心症・心筋梗塞について

狭心症・心筋梗塞のイメージ写真

狭心症および心筋梗塞は冠動脈疾患とも呼ばれます。
心臓の筋肉に酸素や栄養を運ぶ役割を持つ冠動脈の血管内部が狭くなり、血流が滞って起こるのが狭心症、さらにそれが進行して血管が詰まり、血流が途絶えることで、心筋が壊死してしまって起こるのが心筋梗塞です。

狭心症や心筋梗塞の症状の特徴は、胸部の痛みや圧迫感です。特に心筋梗塞では、強い痛みや締め付けられる感覚が現れますので、至急の受診、場合によっては救急車を呼ぶことをお勧めします。
早期に対応を行えば、心筋梗塞でも壊死の範囲を小さく抑えることも期待できます。

狭心症

冠動脈が狭くなることで引き起こされる狭心症の主な原因は、動脈硬化によるものです。
そして動脈硬化の要因となるのは、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病です。
血管が常に高い血圧に曝されたり、糖によって傷つけられたり、脂質などのプラーク(垢)が血管内壁にこびりつくことで、血管壁は次第に硬く、厚く、血管内腔は狭くなります。
これにより引き起こされる狭心症には。労作性狭心症や不安定狭心症があります。

労作性狭心症は、階段の上り下りや、重いものを運んだりといった日常の動作や労働をした時に症状が現れるものです。
動くことで酸素が必要になり、心筋の動きが活発になりますが、血流が滞っているため、心筋に十分な血液が供給されず、心筋虚血状態になり胸痛や吐き気、嘔吐などの症状がみられます。

また不安定狭心症は、労作時、安静時にかかわらず、胸痛や圧迫感といった発作が度々起こるようになるものです。
冠動脈が急激に狭まっているのが原因で、心筋梗塞の前兆であることが多く、発作を繰り返す間に心筋が壊死してしまうこともありますので、治療には緊急を要します。

血管が狭くなる以外に、痙攣等によって起こる狭心症もあります。
冠攣縮性狭心症(異形狭心症)と呼ばれるもので、安静時狭心症ともいい、夜間から早朝にかけて、あるいは昼間でもリラックスしているときに多く見られ、胸痛や圧迫感、胸苦しさなどの症状が出ます。
原因としては冠動脈が痙攣して収縮し、一時的に血流が途絶えるため起こるものです。喫煙やアルコールもきっかけとなると考えられています。

心筋梗塞

心筋梗塞は狭くなった血管に血栓などが詰まって血管が完全閉塞してしまい、心筋に血液が全く届かなくなり、その部分の心筋が壊死してしまうことで発症します。
通常、狭心症よりも強い胸痛がありますが、痛みを伴わないタイプもまれにありますので、注意する必要があります。
一旦壊死した心筋は元に戻りませんので、壊死が広がると心臓のダメージが大きく、命にかかわるものとなります。

狭心症から心筋梗塞に至って発症してしまうと、致死率は高くなります。
また後遺症の残るリスクも大きくなります。以下のような心筋梗塞の前兆が見られたら、お早めにご受診ください。
また激しい痛みなどの症状が現れたら、ためらわず救急車を呼びましょう。

  • 胸の強い痛みや圧迫感、締め付けられるような感覚を覚える
  • 胸やけが治らない
  • 腕や肩、歯やあごに痛みがある
  • 上記のような症状を繰り返すことが多い
  • 階段の上り下りや歩行、何かの作業など動いているときに強く症状が現れる、など

心筋梗塞は基本的に狭心症から進行する病気です。
心筋梗塞の予防はまず、狭心症の予防、あるいは狭心症の段階で、病気の進行を止めることが重要になります。
狭心症の予防としては、生活習慣の改善を図り、高血圧や脂質異常症、糖尿病等による動脈硬化を引き起こさないようにすることが重要です。

生活習慣の改善のみでは進行が止まらない場合、あるいは心筋梗塞の危険性がある場合は薬物療法やカテーテルや手術による治療を行います。
薬物療法としては、硝酸薬、カルシウム拮抗薬、交感神経β遮断薬、抗血小板薬などがあり、血管の緊張を緩め、血液を固まりにくくし、心臓の負担を減らしていくものです。

カテーテル治療は、冠動脈の入り口までカテーテルという細い管を挿入し、小さなバルーンを膨らませて狭くなった部分を押し広げ、血行を確保する治療法です。
バルーンのほか、ステントと呼ばれる筒状の金網を、カテーテルを用いて血管内に挿入して留置する治療もあります。

薬物やカテーテルによる治療でも難しい症状の場合は、体の他の部分の血管を使って、別の血流の通り道をつくるバイパス手術を行うことになります。
この場合、専門の病院と連携を取り、手術後は当クリニックにて定期的に検査を行います。

心不全

心不全のイメージ写真

心不全は様々な病気が原因となり、心臓が全身に血液を循環させる機能が低下したことによって起こる症状のことを指します。
主に収縮機能(心臓から送り出す機能)の低下で、全身に血液が十分に行きわたらないことによる「低心拍出」と、拡張機能(血液を心臓に戻す機能)の低下によって、血液が体に溜まることによる「うっ滞」の二つの状態がみられます。

心不全の症状には以下のようなものがあります

心不全による「低心拍出」の症状
  • 血圧が下がった
  • 疲れやすくなった
  • からだがだるい
  • 手足が冷たい
心不全による「うっ滞」の症状
  • 息苦しい、動いたときに動機や息切れがする
  • 尿の量が減った
  • 足などにむくみが出た
  • 夜、咳が止まらない
  • 体重が増えた
  • 横になると苦しく、座ると楽になる
  • 食欲がない

心不全の原因としては、不整脈、心筋梗塞、心筋症、弁膜症などの疾患の他、先天性疾患の場合もあります。
また高血圧や、過度なストレスにより、引き起こされる場合もあります。
様々な病気が進行していくと、最終的には心不全に至ると言ってもいいでしょう。

当初は、階段の上り下りで息切れするくらいですが、進行すると、ちょっとした動きでも息苦しくなり、さらに進行すると、安静にしていても症状が出るようになります。
就寝中でも咳が出たり、息苦しさにより寝られなくなったりする場合もあります。
これらの症状は、体を起こすと息苦しさが軽減される(起座呼吸)のが特徴で、ここまで進んでしまうとすぐに入院治療を行う必要があります。

高齢者の方では、収縮機能は維持しつつも、拡張機能が低下するパターンの心不全が多く見られるようになっています。
この場合、静脈や肺、心臓などに血液が溜まりやすくなり、通常の検査では見つかりにくく、治療が遅れる危険性があります。
息切れなどがあった場合、歳のせいだとは思わずに、心不全を疑って、早めに受診いただき、検査することをお勧めします。

心不全の治療で使用する薬では、心不全を発症した際に過剰に分泌されるホルモンを抑え、心臓への負担を減らし、保護するものとして、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬があります。
他に、交感神経の緊張を和らげ、心臓を休ませるβ遮断薬や、体に溜まった余分な水や塩分を排出し、心臓の負担を軽減する利尿薬、弱った心臓を強化する強心薬、血栓ができるのを防ぐ抗凝固薬・抗血小板薬などがあります。

心臓弁膜症

心臓弁膜症のイメージ写真

心臓には血液が逆流しないよう、僧帽弁、大動脈弁といった構造物があります。
心臓弁膜症はこれらの弁に異常が発生し、血流に異常が現れるものです。
息切れや咳などの症状があり、さらに胸痛や呼吸困難に陥ることもあります。また心不全や不整脈の原因ともなります。

心臓は右心房、右心室、左心房、左心室と4つの部屋に分かれています。血液はそれぞれの部屋を通って循環していますが、それぞれの部屋には出口にドアがあり、その流れが逆流しないよう、逆流防止弁となっています。
部屋が4つあるので弁も4つあり、それぞれ三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁と呼ばれます。

心臓弁膜症では左心房と左心室にある僧帽弁と大動脈弁に異常が見られる場合が多く、僧帽弁狭窄症、大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁閉鎖不全症等があります。
狭窄症は弁の開きが悪くなり、血流が滞る状態、閉鎖不全症(逆流症)は弁が正しく閉じなくなることで血液の逆流を起こしてしまう状態です。

心臓弁膜症の原因としては、加齢、感染症(リウマチ熱等)、心臓の病気(心筋梗塞、心筋炎等)、外傷、先天的な問題などがあります。
心臓弁膜症は初期には無症状であることも少なくなく、何かの診察の折に、聴診器で心雑音が認められたり、心電図に異常が見られたりすることで発見されることが多くあります。
正確な診断や重症度を調べるためには、超音波による心エコー検査を行います。痛みもなく、放射線も使用しませんので、安心して検査を受けていただくことができます。

心臓弁膜症は進行していくと、次第に心不全や不整脈を引き起こし、そうなると様々な症状が現れます。
心不全では息切れやむくみ、また体重増加が見られることもあります。不整脈では動悸や息切れなどがあります。
これらの症状を「加齢によるもの」と判断し放っておくことは、万が一、心臓弁膜症が背景にあった場合、とても危険ですので、一度検査することをお勧めします。

また心臓弁膜症の患者さんは、心臓に細菌が棲みつきやすくなっていると言われており、感染性心内膜炎に罹りやすいと言われています。
歯科治療等の際には、その予防として抗菌薬を使用することが勧められています。
細菌によって弁が壊されると急激に症状が悪化する危険があります。

心臓弁膜症の治療としては、心不全に至っている場合には、症状を改善する薬物療法を行う場合がありますが、心臓弁膜症そのものの治療に関しては、手術が必要となります。
弁の形を弁形成術、弁を人工弁に置き換える弁置換術があります。
弁置換術では、人工弁として機械弁と生体弁があります。
機械弁は金属で作られたもの、生体弁は動物の組織を加工して作られたものです。
どちらを使用するかは患者さんの心臓の状態や年齢などを総合的に判断して決めていきます。

当クリニックでは、手術が必要と判断した場合、連携する病院を紹介いたします。
手術後の経過観察や日常的なフォローは、当クリニックにて丁寧に行っていきますので、安心して手術を受けていただけます。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群のイメージ写真

睡眠中に無呼吸の状態を繰り返し、そのために様々な病気を引き起こしてしまうのが、睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)です。
無呼吸の状態が継続すると低酸素状態となり、脳が苦しくなって覚醒し、呼吸を再開させようとします。
しかしまた睡眠状態になり、再び無呼吸の状態となります。これか就寝中に繰り返されることになります。

当然、睡眠の質は低下しますし、それによって、いびき、夜間の頻尿、日中の眠気や起床時の頭痛などが引き起こされ、さらに日中の眠気が起こって、仕事や学業にも支障が出るようになります。
また居眠り運転事故や労働災害の原因にもなってしまいます。
さらに低酸素状態が続くと、様々な臓器にも悪影響を及ぼします。
特に循環器系への障害が大きく、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などの疾病を引き起こす危険性が約3~4倍高くなると言われています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)では以下のような症状がみられます

  • 大きないびきをかいている、もしくは家族等にいびきがうるさいと言われる
  • 日中(活動時)に強い眠気に襲われる
  • 熟睡感が得られていない
  • 記憶力が低下している
  • 夜間に何度もトイレに行く(何度も目が覚める)
  • 起床時に頭痛がする
  • 車を運転中、居眠りをしないか不安
  • ED など

睡眠時無呼吸症候群の診断としては、睡眠中の呼吸状態の状況を調べるため、ご自宅にて携帯型装置による簡易検査を行っていただきます。
手の指や鼻の下にセンサーを装着して眠りにつくことで、装着した機器により、いびきや呼吸の状態を測定することができます。

SASと診断された場合の治療としては、マウスピース療法と、経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP/Continuous Positive Airway Pressure)があります。
マウスピース療法は症状が軽い場合に行いうもので、患者さんに合わせて専用のマウスピースを作成し、下あごが上あごよりも飛び出ている状態で固定します。
これにより気道の閉塞状態を緩和させ、SASを解消します。

またCPAP は、SASの標準治療となっており、専用のマスクを睡眠時に装着し、鼻から気道に向けて一定の圧力をかけた空気を送り込みます。
これにより気道を押し広げ、無呼吸の症状を改善します。
鼻呼吸になりますので、いびきの解消、さらには中途覚醒や熟睡感が乏しいといった症状の改善も期待できます。